踵骨骨端症(シーバー病・セーバー病)
踵骨骨端症(セーバー病、シーバー病)
踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう 別名:セーバー病、シーバー病)は、10歳前後の男児に多くみられるのが特徴です。女児にも生じることはあり、当院でもしばしばこの診断でリハビリをすることがあります。
激しい運動のあとに症状が出ることが多く、踵骨というかかとの骨に痛みがでるため、痛みを回避しようとしてつま先歩きをするようになることもあります。
発育期の子どもの弱い踵骨骨端部(かかとの骨の端でアキレス腱が付着しているところ)に運動などで負荷がかかり、そこにアキレス腱の引っぱる力が持続的に加わることで、踵骨に血流障害が起こったりストレスが集中すると、踵骨骨端核(かかとの骨の骨端軟骨より先の部分)の壊死(えし)、または骨軟骨炎を発症するのがこの病気です。
【症状】
・ジャンプやダッシュをすると踵が痛い
・踵に軽い腫れや熱を持つことがある
・踵を押すと痛い(下図参照)
・踵の痛みのためつま先歩きをすることがある
・運動中は痛みがないが、激しい運動の後に踵の痛みが生じる
踵の後方の両サイドを押すと痛むことが多い。踵の先端に痛みが生じることもある。
以上のような症状が成長期の子供に生じているようであれば、セーバー病(踵骨骨端症)の疑いを持ってください。そして、近位の専門医を受診されることをお勧めいたします。当院はスポーツ整形外科ですので、こういった症状に対しても対応可能です。
【原因】
◉使いすぎ(オーバーユース)
セーバー病は一回でケガをする事ははほとんどなく、度重なるストレスによって発症します。
『運動を急に始めた』、『急に練習量が増えた』など過度の負担によるオーバーユースが大きな原因となります。
しかし、ただ使いすぎだからといって休ませただけでは治らない(再発する)ケースもあります。これは、踵にストレスが集中するような身体の使い方や身体の硬さ、筋力の少なさなど身体面の問題があることが根幹の原因の場合に起こりえます。このケースは多いです。
そのようなケースでは、痛みが出るたびに安静にして一時的に痛みが消え、再度運動を再開するとまた痛みが出て、、、というサイクルを繰り返してします。
【発症のメカニズム】
①:踵骨にはアキレス腱(下腿三頭筋という筋肉が集まっている腱)がくっついています。走ったり、ジャンプなどをすると下腿三頭筋が伸び縮みをします。
↓
下腿三頭筋からアキレス腱を伝って、踵骨をひっぱるストレスが生じます。
②:また足の裏にある足底筋膜も踵骨にくっついています。運動時、ダッシュやジャンプの着地などで足底筋膜はひっぱられます。
↓
足底筋膜がひっぱられるストレスによって踵骨に負担がかかります。
①アキレス腱、②足底筋膜を伝って生じるひっぱるストレスによって、踵骨が損傷を受ける事で〝セーバー病〟になります。
このストレスがかかりすぎると、成長期の踵の骨の先端が骨折してしまいます。これは治療に時間がかかることも多いので、早期診断と早期治療をお勧めいたします。(下図参照)
このメカニズムが生じる原因は、アキレス腱の硬さや足底筋膜の硬さが原因になることもありあすが、これを使いすぎてしまう動作習慣や運動の未熟さや、他の関節の柔軟性の少なさなど身体的要素による原因が多岐わたることがあります。
◉クッション性の悪い靴や硬い地面での運動
踵に衝撃が強くかかる事でも症状を引き起こします。クッション性の低いシューズやスパイクを履いていたり、地面が硬いグランドでの運動は地面からの衝撃で踵への負担が大きくなり痛みを引き起こし、セーバー病になる可能性が高くなります。
踵にクッションのある市販のインソールを靴の中にいれるだけでも痛みが解消するケースもあります。
【一般的な治療】
セーバー病の主な原因はスポーツのやりすぎによるオーバユースなので、まずは局所を安静にして休める事が重要です。
痛みが強く続き歩行が困難な場合には、免荷(かかとに体重をかけないこと)するため松葉杖を使います。または、足底挿板(そくていそうばん:靴の中敷き)を使用して踵の骨に荷重がかかりにくいようにします。
電気治療やマッサージなども行われます。
経過は1~数年と長いことが多いですが、予後(治ったあとの状態)は一般に良好です。
【当院の治療】
当院では、なるべく運動を中止しないような治療を行っています。
まず姿勢や動作を分析してなぜセーバー病になってしまったのかを追求します。
スポーツのフォームチェックなども行い、痛みが出ないようなフォームの指導も行います。
激しい運動が大きな原因ですが、体のアライメント(骨の配列や姿勢の取り方)が整っていない状態で運動をすることも原因のひとつです。
近年ではゲーム機やスマートフォン、タブレットなどで下を向く姿勢が長くなってしまうお子様も多いです。椅子に座って下を向くと骨盤が後傾し本来の人間の姿勢が崩れてしまいます。そうなることで体幹を上手に使うことが難しくなり、体のいろいろなところに支障が出てしまいます。そのため、体幹のトレーニングやストレッチなどを行いケガをしにくい体づくりのお手伝いをしていくケースも多いです。
体幹の使い方の訓練の一例。この姿勢を保持したり、ここから片脚を浮かせたりします。
身体に対するリハビリだけではすぐに痛みが引かないけど、大会などで動きを制限したなくないというケースもあります。その場合はテーピングをする事も可能なので、大事な試合やテストがあっても、極力ケガの影響を少なくする対策をしてから現場に臨んでいただけます。
当院での踵骨骨端炎へのテーピングの一例。アキレス腱の緊張を落とし、踵へのひっぱり力を少なくさせることで踵の痛みを生じにくくさせます。
当院はスポーツ選手の治療に力を入れたスポーツ整形外科です。
スポーツを楽しみたいのに踵が痛くて楽しめないお子様のやる気と笑顔を取り戻したいとお考えなら、ぜひ当院の受診をご検討されてみてください。
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